吉岡里帆が『カルテット』で見せた怪演と「人生ちょろい」の深層
物語のクライマックス近く、有朱が放った「人生、ちょろかった」という捨て台詞は、ドラマ史に残るパンチラインとして語り継がれている。この一言の裏には、一体どのような心情が隠されていたのだろうか。
主人公のカルテットドーナツホール4人が、夢破れ、挫折を抱え、それでも音楽にしがみつきながら泥臭く生きているのに対し、有朱は徹底したプラグマティズムと虚無主義を生きている。愛や情といった不確かなものを一切信じず、金と生存戦略だけに全神経を研ぎ澄ます。彼女の「ちょろい」という言葉は、世界を嘲笑しているようでいて、自らが信じる空虚なリアリズムの結晶でもあった。哀愁すら漂わせるそのシニシズムに、現代を生きる私たちがどこか共鳴してしまう皮肉がある。