昭和の大女優・山田五十鈴の生涯|娘・瑳峨三智子との愛憎と真実
映画界の頂点を極めた山田五十鈴が、後見人・重鎮として幅広い世代のファンを獲得したのが、テレビ時代劇『必殺シリーズ』への出演でした。『必殺からくり人』や『必殺仕置屋稼業』、そして代表作となった『必殺仕事人』シリーズの「三味線のおりく」役です。
山田が演じたおりくは、普段は艶やかな三味線の師匠でありながら、裏では冷徹に悪を討つ仕事人の元締。特筆すべきは、劇中で見せる三味線の演奏シーンがすべて本物であった点です。幼少期より極めた清元や長唄の腕前はプロの師匠級であり、撥(ばち)を構える指先の角度や佇まいには一切の妥協がありませんでした。
三味線の撥に仕込んだ刃や、研ぎ澄まされた三味線糸を武器に標的を仕留めるアクションは、彼女の洗練された所作と相まってシリーズ屈指の名場面となりました。主演の藤田まことら共演陣も彼女の放つ凄まじいオーラに圧倒され、撮影現場の空気が引き締まったと回顧しています。大衆娯楽の極致である時代劇に、古典芸能の重厚な品格を吹き込んだ功績は計り知れません。