ポトマック川の悪夢:エアフロリダ90便墜落事故と英雄たちの決断
詳細を見る
「この計器の数値、何かおかしくないですか?」
離陸滑走中、副操縦士のペティットはエンジン圧力比(EPR)計器の異常な指示に気づき、繰り返し機長へ疑問を投げかけた。通常よりも明らかに加速が鈍く、滑走距離が異常に延びていたからだ。しかし、ラリー・ウィートン機長はその懸念を一蹴した。「いや、正常だ。80ノット出ている」と短く返し、滑走を続行させた。
フロリダの温暖な空に慣れていたエア・フロリダのパイロットたちにとって、厳しい冬期運航の経験は圧倒的に不足していた。さらにコックピット内には、機長の判断に異を唱えにくい強烈な上下関係が存在していた。副操縦士は異変を察知していながら、離陸中止(ボート)を強く要求することができなかった。
エンジン防氷装置のスイッチも「OFF」のままだった。その結果、吸気口の圧力センサーが氷で塞がれ、コックピットの計器には実際よりもはるかに高い推力値が表示されていた。パイロットはエンジンが最大出力に達していると信じ込んでいたが、実際の推力は安全に離陸できるレベルを大きく下回っていたのだ。