一条さゆりの壮絶な生涯|逮捕劇の真相と晩年・死因を映画史から解剖
一条さゆりの名を映画史に永遠に刻み込む契機となったのが、1972年(昭和47年)10月に封切られた日活ロマンポルノ『一条さゆり 濡れた欲情』です。大手映画会社だった日活が成人映画路線へと舵を切った黎明期、奇才・神代辰巳監督は、現実のストリッパーである一条さゆり本人を主演に抜擢するという破格の賭けに出ました。
この作品は、虚構のドラマとドキュメンタリーが混沌と交錯する前代未聞の構造を持っています。劇中で一条さゆりは「ストリッパーの一条さゆり」自身を演じ、浅草や関西の劇場風景、そして彼女の舞台を追う新米ストリッパー(伊佐山ひろ子)との奇妙な擬似母娘的・共依存的な愛憎劇が、圧倒的な疾走感と即興的な演出で描かれました。
当時の映画雑誌や手記に残る神代監督の回想によると、カメラの前に立つ一条さゆりは、演技指導を一切拒絶するかのような野生のリアリズムを放っていたといいます。台本に書かれた台詞を吐き捨て、自身の人生から湧き出る生々しい怒りと嘲笑をレンズにぶつける彼女の姿は、成人映画というジャンルの壁を粉砕しました。本作はロマンポルノでありながら、その年のキネマ旬報ベスト・テンで第4位に食い込み、神代辰巳が監督賞・脚本賞を受賞。キネ旬をはじめとする映画賞を総なめにする快挙を成し遂げ、一条さゆりはアングラ劇場の女王から「昭和のカルチャーアイコン」へと押し上げられたのです。