更級日記の現代語訳で迫る生涯|源氏物語オタクの栄光と晩年の真相

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しかし、『更級日記』の後半は、青春期の甘美な熱狂から一転して、重苦しい現実と悔恨のトーンに支配されます。その最大の転換点となるのが、中年期に訪れた家庭崩壊と肉親の死です。

作者は30代半ばという、当時の基準としてはかなり遅い年齢で橘俊通(たちばなのとしみち)と結婚しました。夫は下級貴族(受領層)として地方勤務を転々とし、経済的にも決して恵まれた状態ではありませんでした。そして、菅原孝標女 夫との死別 経緯は唐突に訪れます。康平元年(1058年)、夫の俊通が信濃守としての任期を終えて帰京した直後、重い病に倒れ、そのまま命を落としてしまうのです。

頼るべき家長を失い、子どもたちを抱えて取り残された作者の生活は困窮を極めました。この絶望の中で彼女を襲ったのが、過去に対する激しい自責の念でした。

少女時代から彼女の周囲には、神仏からのメッセージが幾度となく届いていました。これが更級日記 夢告と信仰の重要なモチーフです。ある時は高名な僧侶が夢に現れて法華経の学習を促し、またある時は清水寺の観音菩薩から早く信仰を深めるよう告げられていました。しかし、若き日の彼女は「そんなお告げよりも、今は物語を最後まで読みたい」と、ことごとく神仏のサインを放置し、信仰を後回しにしていたのです。

夫に先立たれた後、作者は「もし若い頃から真面目に仏に仕え、功徳を積んでいれば、こんな悲惨な運命にはならなかったのではないか」と自らを責めさいなみます。ここに更級日記 晩年の心境 真相が存在します。単に夫の死を悲しんでいるのではなく、「フィクションの美しさに魂を売り渡し、現世の生きる基盤を整えることを怠ってきた自らの人生そのものへの敗北宣言」だったのです。現実から逃避し続けたツケを、老境に入って支払わされる作者の姿は、悲劇的でありながら身につまされるリアリズムに満ちています。

松本 悠斗

松本 悠斗

サステナビリティ研究家

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。