熱狂と不安が生んだ奇跡の傑作群!カルチャー激変の舞台裏に迫る
アニメーション映画史におけるひとつの到達点として語り継がれるのが、スタジオジブリが世に送り出した『紅の豚』だ。監督の宮崎駿が自らの趣味性を全開にし、第一次世界大戦後のアドリア海を舞台に描いたのは、豚の姿をした中年飛行艇乗りの矜持と諦念だった。
制作当時、旧ユーゴスラビアで勃発した内戦の影に衝撃を受けた宮崎駿は、子ども向け冒険活劇の枠組みを超え、自らの疲弊した心境をポルコ・ロッソという孤高の主人公に託した。「飛ばねえ豚は、ただの豚だ」という台詞は、単なる名言の枠を超え、混迷する時代を生きる大人たちの胸を鋭く射抜いた。興行収入記録を軽々と塗り替え、スタジオジブリのブランドを不動のものにしたこの作品は、アニメーションがどこまでも深く大人の人生観を描き切れることを証明した金字塔である。