豊田章男会長の現在と社長退任の真相|モリゾウの軌跡と資産・名言を検証

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豊田章男氏のキャリアを語る上で欠かせないのが、エリートとしての生い立ちと、それに相反する現場での泥臭い葛藤です。1956年、トヨタ自動車名誉会長である豊田章一郎氏の長男として愛知県名古屋市に誕生。愛知教育大学附属名古屋小学校・中学校を経て慶應義塾高等学校へ進学し、慶應義塾大学法学部を卒業しました。大学時代はホッケー部に所属し、日本代表としてオリンピック強化選手に選出されるほどのアスリート気質を育んでいます。

大学卒業後は米国バブソン大学大学院でMBA(経営学修士)を取得。帰国後はアメリカの投資銀行で勤務したのち、1984年に27歳でトヨタ自動車へ中途入社しました。創業家の御曹司ゆえに社内からは「特別扱い」「お坊ちゃん」という冷ややかな視線が向けられ、配属先の現場では誰一人として口を利いてくれない孤立無援の時期を経験したと、本人は幾度となく述懐しています。

その孤立を打ち破る転機となったのが、伝説のテストドライバーである故・成瀬弘氏との出会いでした。「クルマの動かし方も知らない人間に、クルマの良し悪しを語る資格はない」と一喝された章男氏は、成瀬氏に弟子入りを志願。命懸けのドライビング訓練を重ね、社内最高峰のトップガン(アドバンスド・テストドライバー)の資格を取得しました。

2007年のニュルブルクリンク24時間耐久レースへの初参戦時、役員がレースに出場することへの社内反発を避けるために名乗った仮名が「モリゾウ」でした。愛知万博のマスコットに由来するこの愛称は、単なる覆面レーサーの域を超え、経営トップが「最も厳しいクルマの評価者」として現場と直結する唯一無二のアイデンティティとなっていきます。

なお、豊田家の系譜において長男である豊田大輔氏(ウーブン・バイ・トヨタ取締役などを歴任)もまた、ルーキーレーシングでドライバーとして参戦するなど章男氏の「クルマ屋スピリット」を色濃く継承しており、創業家のDNAは次世代へと脈々と受け継がれています。

中川 明日香

中川 明日香

ビジネス戦略アナリスト

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。