吃音と生きる表現者たち:言葉の詰まりを希望に変えた有名人の記録
吃音と向き合いながら世界のトップへと駆け上がった人物として、真っ先に名が挙がるのが米国の第46代大統領ジョー・バイデンだ。幼少期、アイルランド系の厳格な学校で教師から話し方を嘲笑された彼は、毎晩鏡の前に立ち、懐中電灯で顔を照らしながらイェイツやエマソンの詩を暗唱し続けた。口元の痙攣を自らコントロールするための孤独な訓練だった。全米吃音協会のイベントで彼が語った「吃音は私の人生で最も辛い試練だったが、同時に他者の痛みに寄り添う共感力を与えてくれた」という言葉は、今も世界中で引用され続けている。
音楽界の最高峰に君臨するシンガーソングライター、エド・シーランの告白も象徴的だ。幼い頃の手術の後遺症で吃音を発症した彼は、言葉が口から出ないもどかしさに苦しんでいた。そんな彼を救ったのが、エミネムのアルバム『The Marshall Mathers LP』だった。高速で刻まれるラップの韻とフロウを狂ったように真似て歌い続けるうちに、不思議と言葉のつかえが解き放たれていったという。シーランは「変わっていることは、素晴らしいことだ。人と違う部分こそが、将来の自分を輝かせる武器になる」と語り、自らの特異性を恐れない姿勢を発信し続けている。