『牛乳を注ぐ女』の秘密を解剖!消された下絵とモデルの正体に迫る
フェルメールの代名詞とも言えるのが、深く鮮烈な青色「フェルメールブルー」です。この絵の具の原料は、当時金よりも高価とされたアフガニスタン産の鉱石「ラピスラズリ」から精製される天然ウルトラマリンでした。
通常、ウルトラマリンは聖母マリアの衣など極めて神聖な主題にのみ用いられる貴重品でしたが、フェルメールは台所で働く家政婦のエプロンやテーブルクロスに贅沢に使用しました。光を受ける部分には澄んだブルーを、影の部分には下地の茶系色と重ねて深みを持たせることで、布地の重厚感と立体感を驚くべき精度で表現しています。
さらに注目すべきは、テーブルに置かれたバスケットとパンの描写です。フェルメールはここで「ポワンティエ(点描技法)」と呼ばれる独自の光の表現を駆使しています。ちぎられたパンの表面に白や黄色の絵の具を小さな点として乗せることで、朝の光がパンの凹凸に反射してキラキラと輝く瞬間を見事に捉えました。この光の粒子による表現が、乾いたパンのざらりとした手触りまでリアルに伝えてくれます。