田原総一朗と「セックス」の真相|東京12チャンネル時代の伝説
田原総一朗氏のディレクター時代を語る上で欠かせない金字塔が、1971年に放送されたドキュメンタリー『日本の花嫁』です。結婚式を終えたばかりの新婚カップルに対し、初夜の寝室にカメラを入れさせてほしいと田原氏自ら直談判。布団の中で展開される営みを暗視カメラや至近距離のレンズで捉えようとしたこの試みは、社内外に激震を走らせました。
当時の撮影現場では、被写体となった夫婦との壮絶な対話が繰り広げられました。単に隠し撮りをするのではなく、被写体と徹底的に向き合い「なぜ恥ずかしいのか」「なぜ愛し合う行為を隠さねばならないのか」を問い詰める田原氏の手法は、被写体の内面に潜む倫理観そのものをあぶり出すプロセスでもありました。結果として放送直後から抗議や絶賛が入り混じる大論争を巻き起こし、テレビ史における伝説的な事件として記録されることになります。
さらに同時代には『ドキュメンタリー 日本の若者』や『バリケードの中のジャズ』など、学生運動、性解放運動、アンダーグラウンド文化に肉薄する作品を次々と発表。田原氏の著書『メディアと権力』や『ドキュメンタリーの現場』にも記されている通り、「誰もが触れたがらない聖域に足を踏み入れること」こそが、彼の演出作法の根幹を形作っていました。