『ギターを持った渡り鳥』の衝撃!日活無国籍アクションの金字塔を解剖
本作の爆発的ヒットを支えた最大の要因は、主演の小林旭、ヒロインの浅丘ルリ子、そしてライバルを演じた宍戸錠という、日活黄金期を象徴するキャスト陣の類まれなるアンサンブルです。
当時20歳前後の小林旭が放っていた存在感は規格外でした。石原裕次郎が持っていた都会的でハイソサエティなスマートさとは対照的に、小林旭が体現したのは、野性的でタフ、それでいて哀愁をまとった泥臭いエネルギーでした。自著や後年のテレビ特番インタビューにおいて、小林旭本人は「現場は毎日が戦場だったが、誰もやったことのない新しいアクションを自分たちの手で作っているという誇りがあった」と述懐しています。重い革のコートを着流し、馬やオープンカーを乗りこなす身のこなしは、まさに天性の映画スターの輝きでした。
そして、当時日活の至宝として絶大な人気を誇っていた浅丘ルリ子の瑞々しい美しさは、無骨な男たちのバイオレンスアクションに可憐な叙情詩を添えました。秋津組の暴力に怯えながらも凛として立ち向かう相良由紀役は、男性観客の庇護欲を激しく刺激し、小林旭とのコンビネーションは「ゴールデン・コンビ」として全国の劇場を沸かせました。
さらに見逃せないのが、宍戸錠の怪演です。日活のニューフェイスとしてデビュー後、自らの個性を際立たせるために豊頬手術を受け、悪役への転身を図った宍戸錠にとって、本作の「殺し屋ジョージ」はまさに役者人生の分岐点となりました。コルトの早撃ち、口笛、不敵な笑み。単なる憎まれ役ではなく、独自の美学と男の意地を持ったライバルを演じ切ったことで、映画に深い陰影と緊張感をもたらしました。当時の撮影所の手記によると、小林旭と宍戸錠の立ち回りシーンでは、リハーサルなしの真剣勝負に近い気迫が漂い、周囲のスタッフが息を呑んだと伝えられています。