樋口一葉から津田梅子へ――新紙幣発行から2年、なぜ私たちは今も「あの紫の紙幣」にレジ前で戸惑うのか
行動経済学の観点から見ても、5000円という額面は極めて特異なポジションを占めている。1万円札を崩すときにはある種の諦めが伴うが、手元に残った紫色の紙幣は、多くの人にとって「最後の防波堤」として機能する。
これを1枚崩してしまえば、残るは千円札数枚と小銭だけ。そこから手持ちの現金が一気に消散していく恐怖感が、支払いの優先順位を狂わせる。結果として、電子マネーの残高が足りない場面でも、人は千円札をかき集めて支払い、この紙幣を財布の仕切りに温存しようとするのだ。
キャッシュレス時代だからこそ、手元に残る現金の「減り方のグラデーション」に対して、人々の防衛本能はかつてなく過敏になっている。その防衛線の中心に鎮座しているのが、まさにこの中間券種に他ならない。