海老蔵のDnaを継ぐ若き天才・市川新之助の覚醒と知られざる素顔
劇場ロビーのざわめきを切り裂くように響く、鋭い掛け声。舞台裏で行われる親子稽古の厳しさは、劇場関係者の間でも度々話題にのぼる。父である十三代目市川團十郎白猿は、かつて市川海老蔵として歌舞伎界を揺るがせた時代から妥協を許さない表現者だが、息子への指導はそれ以上に苛烈だ。
立ち居振る舞い、指先の角度、声の抑揚。わずか数ミリの狂いも見逃さず、同じ動作を何十回、何百回と繰り返させる。少年は弱音を吐かない。悔しさに唇を噛み締めながらも、父の背中をまっすぐ見据えて食らいつく。時に稽古場で涙を浮かべることがあっても、稽古着の袖で乱暴に拭い、すぐに次の構えをとるという。
客席から見える華やかな姿の裏には、こうした血のにじむような鍛錬の積み重ねがある。親子であり、師弟であり、同じ板の上に立つライバルでもある。その張り詰めた緊張感が、若き役者の才能を急速に研ぎ澄ませている。