濱尾実とは何者だったのか?上皇ご夫妻との秘話と皇室教育論の深層
教育評論家やコメンテーターとしての親しみやすい語り口から、市井の教育者と思われがちな濱尾実氏ですが、そのルーツをたどると近代日本の学術・司法・文化を牽引した名門一族に行き当たります。
濱尾実家系図を紐解くと、祖父は東京帝国大学(現・東京大学)総長や文部大臣、枢密院議長を歴任し、男爵に叙爵された濱尾新(はまお・あらた)氏です。国家の最高学府と教育行政の頂点に君臨した人物を祖父に持ち、父の濱尾四郎氏は検事、弁護士を務めながら子爵議員として貴族院で活動し、さらには推理作家としても名を馳せた異色の文化人でした。江戸川乱歩らと並び黎明期の日本探偵小説界を支えた才人として知られています。
兄弟関係も極めて顕著です。実氏の実兄である濱尾文郎(はまお・ふみお)氏は、カトリック横浜司教を経てローマ教皇庁(バチカン)の移住・移動者司牧評議会議長を務め、日本人として歴代3人目となるカトリック枢機卿に親任された世界的宗教指導者でした。学術、法曹、文学、宗教の各分野で頂点を極めた血筋の中で育った背景こそが、濱尾氏の持つ揺るぎない教養と、皇族方に対しても卑屈にならず毅然と接する精神的背骨を形作ったと言えます。
1925(大正14)年に東京で生まれた実氏は、慶應義塾大学文学部を卒業後、学習院初等科教諭として教育界に足を踏み入れました。生徒の自主性を重んじ、一人ひとりの個性に向き合う熱血指導で児童や保護者から絶大な信頼を集めていた1958(昭和33)年、宮内庁からの強い要請を受けて東宮侍従に就任。民間から皇太子妃として美智子さまが輿入れされるという、皇室史の大きな転換期に身を投じることになります。