テレビ視聴率崩壊の真相|コアシフトとTver台頭が変えた現在地
そもそも、日本におけるテレビ視聴率はどのように測定されているのでしょうか。長年この領域を独占的に担ってきたのが、1962年設立のビデオリサーチです。同社は日本国内の全27放送エリアにおいて、統計学に基づき無作為抽出されたサンプル世帯に専用の測定機器を設置してデータを収集しています。
かつてはテレビの上部に設置された「ピープルメーター(PM)」のリモコンで、家族それぞれが割り当てられた番号ボタンを押して在宅・視聴を記録する方式が主流でした。現在ではセンサー技術の高度化に伴い、より負担の少ない自動識別技術や専用タブレット端末を用いた認証へと進化しています。関東地区だけでも約2,700世帯、全国では1万世帯以上のサンプルを常時追跡しており、ビデオリサーチが運営するメディア「VR Digest+」では、過去の名作アーカイブから日々の動向に至るまで膨大なデータが開示されています。
一方で、近年のメディアプランニングにおいて急速に存在感を増しているのが、スイッチメディアが運営する「TVAL(ティーバル)」に代表される新興のAI広告データプラットフォームです。
TVALは国内最大規模のテレビ視聴パネルを保有し、放送中の番組視聴状況を秒単位で捕捉するリアルタイム視聴率速報ツール「TVAL now」などを展開しています。従来の「世帯・個人」という大まかな括りにとどまらず、Z世代、ファミリー層、富裕層、特定の趣味嗜好を持つクラスタといった細かいセグメントごとに、誰がどのCMを何秒間注視したかというアテンションデータまでをも即座に可視化します。
番組制作の現場や広告代理店の運用ルームでは、かつてのように「翌朝9時半のビデオリサーチ確定報を待つ」だけでなく、放送中にリアルタイムで変動するグラフを監視しながら、裏番組との競合状況やSNSでのバズの波及効果を分単位で分析する体制が整えられています。テレビ視聴率の現在とは、単なる「推計の目安」から「デジタル広告と同等の透明性を持つ精緻なトラッキングデータ」へと変貌を遂げた姿なのです。