エスパー魔美最終回の真相|原作未完の理由とアニメ「動き出した時間」
原作漫画が日常の延長線上で幕を閉じたのに対し、テレビアニメ版(1987年〜1989年放送、全119話)は、アニメ史上に残る傑作エピソードで完璧な幕引きを行いました。それが1989年10月26日に放送された第119話「動き出した時間」です。
この最終回で絵コンテ・演出を担当したのは、後に映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』や『河童のクゥと夏休み』で世界的評価を受けることになる原恵一チーフディレクターでした。
エピソードの核心となるあらすじは、中学3年生の秋を迎えた魔美と高畑さんが直面する「進路」と「時間の不可逆性」です。名門高校を目指して猛勉強に励む高畑さんと、将来の目標が定まらず焦燥感を募らせる魔美。二人が過ごしてきたモラトリアムの終わりが静かに迫る中、近郊の山で大規模な土砂崩落事故が発生します。
生き埋めになった遭難者を救うため、魔美は自身の限界を超えてテレポートとサイコキネシスを連発します。肉体的にも精神的にも追い詰められ、超能力者ゆえの孤独に押し潰されそうになる魔美の前に駆けつけたのは、他でもない高畑さんでした。彼の手当てと励ましによって遭難者は無事に救出されます。
救出劇のあと、夕暮れの河原で二人は語り合います。子供時代が終わり、否応なく大人の世界へと歩み出さなければならない現実に対し、高畑さんは「僕たちの時間は動き出したんだ」と優しく告げます。特別な甘いセリフも、恋人同士のような抱擁もありません。ただ、冷たい秋風の中で未来を見据える二人の横顔を映し出し、物語は静謐に幕を閉じます。思春期の通過儀礼を鮮烈に描いたこの幕切れは、放送から四半世紀以上が過ぎた今もアニメファンの涙を誘っています。