塩沢湖畔に佇む文学と名建築の避暑地、心を解き放つ大人の散策路
近代建築ファンにとって、この場所はまさに聖地と呼ぶにふさわしい。フランク・ロイド・ライトの愛弟子として知られる世界的建築家アントニン・レーモンドが、1933年に自身の別荘兼スタジオとして設計した「夏の家(旧軽井沢レーモンド夏の家)」は、日本の伝統的な木造構法と西洋モダニズムが見事に融合した傑作だ。
丸太の柱や傾斜した屋根、開放的な大開口部から差し込む自然光は、周囲の景観と建物を隔てる境界を曖昧にし、自然と共生する心地よさを肌で感じさせる。保存・移築されたこの建物に身を置くと、木肌の温もりと風の抜け具合に、現代のエコ建築の原点を見る思いがする。
湖畔に佇むヴォーリズ建築の洋館「睡鳩荘(旧朝吹山荘)」も見逃せない。かつてフランス文学者の朝吹登水子が過ごしたこの瀟洒な別荘は、塩沢湖の水辺に美しい影を落とし、往時の優雅なサロン文化を今に伝えている。建造物の記憶を訪ね歩くヘリテージツーリズムの視点で見ても、軽井沢の原風景とモダニズムがこれほど凝縮された空間は他に類を見ない。