松本清張『日本の黒い霧』が暴いた戦後タブーとGhq関与の真相

松本清張『日本の黒い霧』が暴いた戦後タブーとGhq関与の真相に関する主要なデータを丁寧に解説いたします。

『日本の黒い霧』の中で最も読者に強い衝撃を与えたのが、下山事件と帝銀事件への考察です。

1949年7月、人員整理を断行中だった国鉄の下山定則総裁が常磐線の線路上で轢死体となって発見されました。警視庁捜査一課は自殺説、捜査二課および法医学解剖班(東大・古畑種基教授ら)は他殺説を主張し、真相は迷宮入りとなりました。清張はこの事件に対し、米軍諜報機関であるCIC(対日民間諜報隊)やキャノン機関が、労働運動を壊滅させ治安強化を進めるために仕掛けた謀略であるとの仮説を提示しました。当時の緊迫した米ソ冷戦下において、日本の共産化を防ぐための「見せしめ」だったのではないかという推理は、読書界に激震をもたらしました。

一方、1948年に発生した帝銀事件(帝国銀行椎名町支店で毒物により12名が毒殺された事件)では、逮捕・死刑確定した画家・平沢貞通氏に対する冤罪の疑いを強く告発しています。犯行に使われた毒物が市販の青酸カリではなく、軍用の遅効性青酸化合物(アセトン・シアンヒドリン)である可能性が高いこと、犯人の手口が軍事訓練を受けた者の所作であることから、旧日本陸軍「731部隊(関東軍防疫給水部)」関係者の関与を疑う捜査線がGHQの介入によって突如遮断された経緯を指摘しました。軍事機密の引き換えに戦犯免責を得ていた米軍と部隊関係者の癒着という構図は、現代の歴史研究でも極めて重大な論点として語り継がれています。

山下 哲也

山下 哲也

自動車・モビリティライター

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。