トロッコ問題の答えとは?1人犠牲で5人救う合理的根拠とAi倫理の真相
思考実験としての議論は、自動運転テクノロジーの進化によって現実の開発現場へ完全になだれ込みました。これがトロッコ問題AIの倫理判断をめぐる激論です。時速100キロで走行中の自動運転車が、突如道路上に飛び出してきた集団を感知した際、ハンドルを切ってガードレールに突進し乗客1人を犠牲にするか、それともそのまま直進して複数の歩行者を轢くか――まさに現代版トロッコ問題です。
マサチューセッツ工科大学(MIT)が主導した世界規模の調査「モラル・マシン(Moral Machine)」では、世界233の国と地域から4000万件以上の意思決定データが集められました。その結果、文化圏による細かな違いはあるものの、「動物より人間を優先する」「より多くの命を救う(被害の最小化)」という2点に関しては、全人類規模で強固な合意が形成されていることが確認されています。
しかし、ここで興味深い人間の心理的矛盾が生じます。取材に応じた自動運転システム開発に携わるエンジニアは次のように実情を吐露しています。「社会全体としては『複数の命を救うために被害最小化を行う車』を求めているのに、いざ自分が車を購入するとなれば『いかなる時も搭乗者の身の安全を絶対最優先する車』を買いたがる」。このエゴイズムを乗り越え、法制度として社会全体の総被害を最小化する基準を敷くことができるかどうかが、現在進行形の焦点となっています。