なぜ世界は異形の美に熱狂するのか?族車文化の異端な歴史と真実
族車を唯一無二の存在たらしめているのが、過激な外観パーツと、世界に類を見ない音のカスタマイズだ。とりわけ空に向かって数メートルも伸びる「竹ヤリマフラー」や、フロントバンパーを極限まで延長した「デッパ(出っ歯)」、そして車体を巨大に見せる「ぶち上げ」カウルは、もはや移動手段としての自動車や二輪車の概念を完全に逸脱している。
さらに特筆すべきは、アクセルワークとクラッチ操作のみで排気音の旋律を奏でる「コール技術」の発展だ。スピードを競うのではなく、エンジンの回転数を巧みにコントロールして独自の音階を作り出すこの技法は、厳格な排ガス規制や騒音規制の荒波の中で磨き上げられた。違法改造という法的制約を受けながらも、職人技のような手作業と発想の転換によって、日本独自のカスタム美学は警察の監視下で皮肉にも研ぎ澄まされていったのである。