蕎麦屋の看板文字「変体仮名」の正体|明治の廃止真相と五十音の読み方一覧

蕎麦屋の看板文字「変体仮名」の正体|明治の廃止真相と五十音の読み方一覧に関する深掘り解説を詳しく解説いたします。

日本における仮名の歴史を遡ると、平安時代初期に漢字の音を借りて日本語を表記した「万葉仮名」に行き着きます。当時の人々は、漢字を極限まで簡略化(草体化)することで平仮名を生み出しました。しかし、そこで定着した文字は1つの発音に対して1文字だけではありませんでした。

例えば「あ」という音ひとつに対しても、字母(じぼ:元の漢字)として「安」だけでなく「阿」「愛」「悪」などが使われ、筆者の美意識や前後の筆の流れ(連綿)、文脈の品格に合わせて自在に使い分けられていたのです。当時の人々にとって、文字のバリエーションを豊富に持つことは高度な教養と粋(いき)の象徴でした。

1900年(明治33年)小学校令施行規則という一大転換点

この豊かな文字文化に劇的な終止符を打ったのが、1900年(明治33年)8月に文部省が公布した「小学校令施行規則」でした。近代国家としての体裁を整え、富国強兵と産業革命を推進していた明治政府は、国民全体の識字率向上と学校教育の効率化を急務としていました。

当時の文部省官僚や国語改良派の教育者たちは、「1つの音に複数の文字が存在することは、児童の学習負担を過度に増やし、印刷・活字行政の著しい非効率を招く」と判断。小学校令施行規則の第一号表において、現在の平仮名48文字(「ん」を含む)のみを「標準の字体」として選定し、それ以外の仮名を公教育から完全に排除しました。

この標準化によって正規ルートから外れた数百種類に及ぶ仮名が、後世になって「標準と異なる体の仮名」という意味で「変体仮名」と総称されることになったのです。

鈴木 陽菜

鈴木 陽菜

テックライター兼ウェブディレクター

暮らしを豊かにする便利アイテムや時短アイデアを中心に、実用的な情報をお届けします。