黒沢清や周防正行を支える映画編集技師・香川知子の独自の眼差し
コメディや青春ドラマで軽快なステップを刻む一方で、香川知子のもう一つの真骨頂がサスペンス映画における異様なまでの緊迫感の創出だ。世界的映画監督・黒沢清との長年にわたるコラボレーションは、その最高峰に位置する。
とりわけ1997年の傑作『CURE』において、香川が仕掛けた「間(ま)」の演出は世界中に衝撃を与えた。あえてカットを割らずに不穏な空気を滞留させ、観客が最も油断した瞬間に鋭利なカッティングを差し込む。説明過多に陥りがちな現代劇において、あえて情報を削ぎ落とし、余白に潜む狂気を際立たせるそのアプローチは、世界中の映画祭で熱狂的な支持を集めた。