京都すき焼きキムラが誇る破格コスパの真相!予約とメニューを徹底取材
引き戸を開けて店内に足を踏み入れた瞬間、利用者は昭和初期へのタイムスリップを余儀なくされます。玄関には今や見かけることが稀になった昔ながらの「下足番」が控え、手渡されるのは木製の靴札。ギシギシと心地よい軋み音を立てる木造階段を上がり、案内されるのは畳敷きの大広間、あるいは擦りガラスで仕切られた個室風の小上がりです。
テーブルに鎮座するのは、重厚な南部鉄器のすき焼き鍋と、年季の入った卓上ガスコンロ。運ばれてくるのは、鮮やかな霜降り肉、白菜、ネギ、焼き豆腐、糸こんにゃく、お麩、そして調味料である角砂糖(または上白糖)と特製醤油、割り下用の出汁です。
卓上の指南書通りに仕上げる「キムラ流調理作法」
給仕スタッフが肉を焼いてくれることはありません。壁や卓上に貼られた「おいしい召し上がり方」を読み解きながら、自分の手で鍋を育てていくのがキムラの醍醐味です。
- 牛脂を全体に馴染ませる:熱した鉄鍋に牛脂を滑らせ、全体に脂の膜をしっかり張ります。
- 砂糖を敷き、肉を広げる:鍋底に砂糖を適量振り入れ、その上にロース肉を平らに広げます。ジューという豪快な音とともに甘い焦げ香が立ち上ります。
- 醤油を直がけし、手早く裏返す:肉の表面に特製醤油を回し入れ、肉の色が変わり始めた瞬間に裏返します。焼きすぎは禁物です。
- 溶き卵にダイブさせる:ピンク色がわずかに残る絶妙な段階で引き上げ、溶き卵にくぐらせて一口で頬張ります。
- 野菜から出る水分で煮込む:肉の旨味が残った鍋底に野菜・豆腐・糸こんにゃくを並べ、必要に応じて割り下を足しながらじっくりと味を染み込ませていきます。
「失敗したらどうしよう」という心配は無用です。砂糖と醤油、酒、出汁の加減を自分好みに微調整しながら、濃いめの味付けで白米をかき込み、キンキンに冷えた瓶ビールを流し込む。この野趣あふれる自由さこそが、多くのリピーターを虜にする最大の仕掛けなのです。