忍び寄る薬物性暴力の脅威:巧妙化する手口と身を守る最新防犯対策
近年、犯罪に使われる薬品の多角化と入手ルートの多様化が、被害の発覚をいっそう難しくしている。以前は特定の強い麻薬類が疑われることが多かったが、現代では日常的に処方されるベンゾジアゼピン系睡眠薬や、水に溶けると無色無臭になる液体状の薬物が悪用されるケースが目立つ。
加害者の手口は極めて巧妙だ。席を立った一瞬の隙にグラスへ薬物を投入する行為はもちろん、最初はアルコール度数の非常に高いカクテルを勧め、泥酔状態を作り出した上で薬物を併用するといった手法も確認されている。薬物が作用すると、急激な眠気やふらつき、そして強烈な前向性健忘(出来事を記憶できない状態)が引き起こされる。被害者は自分が性的被害に遭ったことすら客観的に確信できず、翌朝違和感とともに目覚めた時には、すでに体内の薬物代謝が進んでしまっていることが多い。
法医学者への取材でも、液体薬物の中には体内で急速に分解され、通常の尿検査では検出限界を下回ってしまうものが存在することが指摘されている。時間が経過すればするほど科学的証拠は消え去り、被害者の記憶の混乱だけが取り残される。これこそが、この犯罪が「見えない脅威」と呼ばれる所以である。