『Butter』柚木麻子の傑作を考察!連続不審死事件が映す欲望
関係者の証言によれば、執筆過程における柚木麻子の取材と執筆への執念は並々ならぬものだったという。著者自身が実際に作中に登場する様々な料理を試作し、バターの分量や香りの立ち方にまで徹底的にこだわり抜いたというエピソードは有名だ。面会室での緊張感を表現するため、拘置所周辺の匂いや空気感まで入念にリサーチされた。
また、新潮社の担当編集者が明かす裏話として、梶井という強烈なキャラクターの台詞回しは、何度も推敲が重ねられたという。ただ毒舌で身勝手な悪女を描くのではなく、「正論と歪んだエゴが紙一重で同居する人物」として描くことで、読者が思わずカジシンの論理に引き込まれてしまうという罠が緻密に仕掛けられたのだ。こうした舞台裏のこだわりが、作品に類まれな立体感を与えている。