女王アリが死んだら巣はどうなる?崩壊の理由と後継をめぐる驚きの真実
ここで多くの人が抱くのが、「なぜ残された卵や幼虫から新しい女王を育てないのか?」という疑問です。ミツバチの世界では、女王が死ぬと働きバチが特別なエサ「ローヤルゼリー」を特定の幼虫に与えて「王台」で新女王を緊急育成する仕組みが存在します。しかし、一般的なアリにはこのシステムがありません。
新女王が誕生する絶対条件は、女王アリが生きている初夏などの特定の繁殖期に、十分な栄養を与えられた「有精卵由来の幼虫」が存在していることです。女王が死んでしまった後では有精卵自体が手に入らないため、働きアリがいくら手厚く世話をしても、新しい女王を作り出すことは生物学的に不可能です。
ただし、自然界には驚くべき例外も存在します。アリの種によっては独自の女王アリ交代の仕組みを備えているケースが確認されています。
代表的な例が、沖縄などに生息するトゲオオハリアリの繁殖形態です。トゲオオハリアリの巣にはもともと羽のある形態の女王アリがおらず、働きアリと外見が同じ個体が繁殖を担います。トップの産卵個体が死ぬと、残されたメスたちが触角で激しく叩き合う順位決定戦(ガメルゲート争い)を繰り広げ、勝利した上位の個体だけが外部から飛来したオスと交尾して、新たな産卵主へと昇格します。
また、ひとつの巣に数百匹単位の女王が存在する「多女王制」のトビイロシワアリや外来種のヒアリなどでは、仮に1匹の女王が死亡しても他の女王たちが産卵を継続するため、巣が崩壊することなく何十年も存続し続けます。