恩赦はいらない?三権分立の矛盾と被害者感情から迫る廃止論の真相
恩赦に対する国民の反発が根強い最大の理由は、被害者感情を著しく逆なでする制度設計にあります。犯罪被害者や遺族は、刑事裁判を通じて下された判決を一つの区切りとして受け止め、癒えない傷を抱えながら日々を生きています。それにもかかわらず、国の慶事などを口実に加害者の罪が減免されたり、資格制限が解除されたりすることは、「司法の審判を踏みにじる行為」と受け止められても仕方がありません。
さらに法学的な観点からも、三権分立の基本原則との矛盾が深刻視されています。法治国家において、個別の犯罪事実を認定し刑罰を科す権限は司法(裁判所)に属します。ところが恩赦権は内閣の助言と承認に基づき天皇の国事行為として行使されるため、実質的には行政が司法判断を事後的に書き換える権能を持つことになります。憲法学者や法曹関係者からも「司法権の独立を脅かす特権行使であり、現代の法体系と整合しない」との批判が絶えません。
また、かつて恩赦の主目的とされた「国民の融和」という発想そのものが、多様な価値観が交錯する社会において時代遅れの遺物とみなされている側面も否定できません。国家の祝意を表す手段として犯罪者のペナルティを軽減するという論理は、一般市民の法感情から大きく乖離しています。