映画『誰も知らない』元ネタの巣鴨事件と消された少女の真実
1988年7月、巣鴨署の捜査員が踏み込んだワンルームマンションの部屋に広がっていたのは、悪臭と荒廃にまみれた過酷な生活の痕跡だった。母親は新たな交際相手と暮らすために家を出ており、当時14歳だった長男が、父親の異なる妹たちの面倒を見ながら生活を維持していた。しかし、本来そこにいるはずだったもう一人の少女――三女の姿はどこにもなかった。
子どもたちは誰一人として戸籍を持たず、学校教育を受ける機会すら奪われていた。近隣住民は子どもの存在を薄々察知していながらも、家庭内の事情に踏み込むことはなく、行政のセーフティネットも完全に機能を停止していた。長男は母親から時折送られてくるわずかな現金で食料を買い、幼い妹たちに分け与え続けた。社会から完全に断絶された空間で、子どもたちだけの限界の共同生活が続いていたのだ。