なぜ4語だけ?古文の呪文「ありおりはべりいまそかり」の謎を解く

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国語の教科書や参考書を開くと、決まって「ラ変はこの4語のみ」と断言されています。数千から数万とある日本語の動詞の中で、なぜこれほど少数精鋭の例外が固定化されたのでしょうか。

その真相を解く鍵は、「すべての言葉が『あり』のバリエーションである」という語源のルーツにあります。

言語学的な語源の経緯を紐解くと、4つの動詞は以下のように成立しています。

・あり:すべての根本。「存在する」という根源的な意味を持つ単語。
・おり(居り):座っている状態を表す「ゐ(居)」+「あり」が縮約されたもの(ゐあり → をり)。
・はべり(侍り):身分の高い人のそばに控える「はひ(這ひ)」+「あり」、あるいは「侍ふ」+「あり」が融合したもの。
・いまそかり(在そ狩り):「いまし(在し)」+「あり」の音便化、あるいは「います(居ます)」+「あり」の複合形。

つまり、独立した別々の動詞が4つあったわけではなく、純粋な「あり」と、それに接頭辞や別の動作が合体した「ありファミリー」だけが集まっているのです。

古代の日本語において、動詞の終止形はもともと多様な形態を持っていましたが、時代の流れとともに発音の統一が進み、ほとんどの動詞は「ウ段」で終わるルールへと収束していきました。しかし、「存在する」という意味を担う「あり」は、日常の会話や儀式において最も使用頻度が高い超基本語でした。

言語には「使用頻度が極めて高い語ほど、昔の不規則な古い形が変化せずに残りやすい」という法則があります。英語の「be動詞(am, is, are, was)」が一般動詞とかけ離れた不規則変化を維持しているのと全く同じ現象が、古代日本語の「あり」一族にも起きたのです。他の動詞が新しい規則に移行するなか、この4語だけが古い文法構造を化石のように残した結果が、現在の「4語だけ」の正体です。

佐藤 大輔

佐藤 大輔

シニアコンテンツプロデューサー

最新のテクノロジーと生活デザインの融合をテーマに、国内外の最新トピックを発信しています。