鳩山由紀夫の土下座はなぜ起きた?韓国・西大門刑務所謝罪の真相と現在
この騒動を検証する上で欠かせないのが、日韓両国における身体的所作の意味の違いと文化摩擦です。日本のインターネット上やワイドショーでは、鳩山氏の行動は一貫して「土下座」と形容され、批判の火種となりました。しかし、現地の作法と文脈に照らし合わせると、別の文化的解釈が浮かび上がってきます。
日本文化における「土下座」は、重大な罪を犯した者が相手に対して自らを貶め、屈辱に耐えながら許しを乞う極端な卑屈のサインとして受け取られがちです。そのため、「日本の首相経験者が他国で土下座をした」というニュースは、日本人の国民感情にとって耐え難い屈辱感をもたらしました。
一方、韓国文化において、靴を脱ぎ膝を折って両手を床につき頭を下げる所作は「クンジョル(큰절:大礼)」と呼ばれる最高級の礼式です。これは旧正月や秋夕(チュソク)の際に両親や祖父母などの目上の親族に対して感謝と敬意を伝える際や、先祖の法事、あるいは尊崇すべき英霊の前に祈りを捧げる際に行われる、極めて格式の高い敬礼です。決して屈辱的な謝罪ではなく、相手に対する最大級の敬意を表す伝統作法とされています。
鳩山氏側は後に、「追悼碑の案内役から靴を脱いで上がるよう促され、心からの哀悼と敬意を捧げるために、現地の礼法に従って膝を屈したに過ぎない」という趣旨の説明を行っています。つまり、本人の意識としては「土下座で屈服した」のではなく、「韓国の伝統的な最敬礼をもって英霊に祈りを捧げた」という解釈でした。
しかし、文化的な形式がどうであれ、国際政治の舞台において視覚的イメージが持つ力は絶対的です。韓国式のクンジョルであったとしても、その画像が世界に配信された瞬間、文脈を知らない日本国民には「日本の元リーダーが韓国に土下座した」という無条件の降伏ポーズとして消費されました。異なる文化圏の記号を不用意に踏襲し、自国の国民感情を逆撫でしたコミュニケーションの失敗という現実は覆せません。