「忘却」の本当の意味とは?「忘れる」との決定的な違いと記憶の真実
混同されやすい概念として「記憶喪失」が挙げられます。小説やドラマ、ニュース報道などで耳にする機会が多いものの、医学的・心理学的な観点から両者には明確な境界線が引かれています。
忘却は、健康な人間の脳が日常的に行っている生理的・認知的な自然現象です。覚えた情報へのアクセスルートが時間の経過や干渉によって一時的・恒常的に遮断されるプロセスであり、誰にでも平等に発生します。
一方の「記憶喪失(amnesia)」は、頭部外傷や脳血管障害、あるいは強烈な心理的ショック(解離性障害)などによって引き起こされる病理学的な異常状態を指します。過去の特定の記憶(自伝的記憶など)が抜け落ちる逆行性健忘や、新しい出来事を記憶できなくなる前進性健忘などがあり、自然な情報淘汰である忘却とは根本的な発生機序が異なります。