『イニシエーション・ラブ』最後の2行ネタバレ!トリックの真相解説
小説『イニシエーション・ラブ』を語る上で避けて通れないのが、文庫本の最終ページに刻まれた「最後の2行」です。この結末の意味が瞬時に理解できず、思わず巻頭へページをめくり直した読者は少なくありません。
クライマックスの舞台は、1987年12月24日、クリスマスイブの夜。Side-Bの語り手である「鈴木辰也」は、東京で新しく惹かれ合っていた石丸美弥子との約束を反故にし、静岡に残してきた恋人・成岡繭子(マユ)への未練と罪悪感から、かつて2人で予約していた「ホテルセンチュリー静岡」のロビーへと駆けつけます。そこで辰也は、見慣れた服装で誰かを待っているマユの姿を発見します。安堵と期待を胸に駆け寄ろうとしたその瞬間、見知らぬ小太りの青年と正面衝突します。
小説のラストシーンで描かれる決定的なやり取りは、以下の2行で幕を閉じます。
「……あ、ごめんなさい」
「たっくん、遅ーい!」
ぶつかった見知らぬ青年が発した「あ、ごめんなさい」という謝罪、そしてその直後にロビーに響き渡った、マユの親しげな呼びかけ「たっくん、遅ーい!」。この2行が意味するのは、マユが待っていた「たっくん」とは、東京から駆けつけた辰也ではなく、いまぶつかった小太りの青年だったという冷徹な事実です。
読者はSide-Aを読み進める中で、「冴えない童貞の大学生・鈴木夕樹が、マユのために過酷なダイエットに励み、運転免許を取り、コンタクトレンズに変えて洗練された青年(Side-Bの鈴木)へと成長した」と信じ込まされていました。しかし、この最後の2行によって、目の前でぶつかった小太りの青年こそが「Side-Aの鈴木夕樹」であり、東京で美弥子と浮気していた「Side-Bの鈴木辰也」とは最初から最後まで全くの別人であった事実が白日の下に晒されます。