軽度ダウン症に気づかない理由はなぜ?モザイク型の真相と診断実態
産院を退院した後も、日本の母子保健制度には生後1ヶ月、3〜4ヶ月、6〜7ヶ月、1歳6ヶ月、3歳と、幾重にもわたる乳幼児健診のセーフティネットが存在します。それにもかかわらず、なぜ乳幼児健診で見つからない理由が生じるのでしょうか。
第一の理由は、集団健診における「診察時間の物理的制約」と「発達の個人差の幅」です。自治体の保健センターで行われる健診では、1人の小児科医が数時間で数十人の乳幼児を診察します。軽度ダウン症の顔つきと身体的特徴として知られる「眼裂斜上(つり上がった目)」「内眼角贅皮(目頭のひだ)」「鼻根部の平坦さ(低い鼻)」「猿線(手のひらのますかけ線)」などは、実は染色体異常のない一般の日本人乳幼児にも単独で頻繁に見られる特徴です。たとえば「ますかけ線」は健常児でも片手なら約5〜10%に出現するため、これだけでダウン症を疑うことはありません。
小児科医が見分けるポイントとして最も重視されるのは、顔つき以上に「全身の筋緊張の低下(フロッピーインファント)」と「運動・言語発達の遅れ」の組み合わせです。しかし、モザイク型ダウン症の知能と発達に関する追跡調査(米国遺伝学会および国内小児神経学会の報告)によると、モザイク型の子どもは標準型に比べて首すわり(定頸)や独り歩きの達成時期が早く、定型発達児の下限ライン(たとえば独り歩きが1歳4ヶ月〜1歳6ヶ月頃)に収まるケースが少なくありません。「少しおっとりした子ですね」「個人差の範囲内で様子を見ましょう」という判定が下され、そのまま健診をパスしてしまう構造があるのです。