ハチとアブの違いを徹底解剖!見分け方と刺された時の危険度【2026】
両者の危険性を理解する上で最も重要なのが、ハチとアブの攻撃方法の違いと、それに伴う生体反応のメカニズムです。
ハチの攻撃は100%「自衛と防衛」です。メスの産卵管が変化した強靭な毒針を皮膚に突き刺し、皮下組織へ直接毒液を注入します。スズメバチやアシナガバチの毒液には、アミン類(ヒスタミン、セロトニン)、ペプチド類(ハチ毒キニン)、酵素類(ホスホリパーゼ、ヒアルロニダーゼ)など多彩な生理活性物質が含まれます。このため、刺された瞬間に「焼け火箸を押し当てられたような激痛」が走り、急速に局所が発赤・腫脹します。
最大の脅威はハチ毒とアナフィラキシーです。過去に刺された経験がある場合、体内にIgE抗体が形成されていると、2回目以降の刺傷時に免疫系が過剰反応を起こし、全身の蕁麻疹、呼吸困難、血圧低下、意識障害を伴うアナフィラキシーショックを発症します。厚生労働省の人口動態統計によると、日本国内では毎年15〜25名前後がハチ刺症により命を落としており、刺傷後15〜30分以内に心停止に至るケースも報告されています。
これに対し、アブが血を吸う理由は防衛ではなく「栄養摂取(吸血)」にあります。吸血を行うのは産卵を控えたメスのみであり、卵巣を発達させるために動物性タンパク質を必要とします。アブにはハチのような毒針は存在しません。その代わり、鋭利な刃物のような大あごと小あごを使い、哺乳類の皮膚を物理的にノコギリのように切り裂いて毛細血管を破綻させ、にじみ出た血液をなめ吸います。
切開された傷口には、血液の凝固を防ぐための抗凝血物質や血管拡張物質を含む唾液が注入されます。この唾液成分がアレルゲンとなり、アブに刺された時の症状(正確には咬傷被害)として、受傷後数時間から翌日にかけて激しい腫れ、熱感、そして眠りを妨げるほどの猛烈なかゆみが生じます。アブの唾液による全身性アナフィラキシーショックの発生頻度はハチ毒に比べて極めて稀ですが、激痛とかゆみによる掻き壊しから化膿や蜂窩織炎(ほうかしきえん)を併発するリスクが高く、完治までに数週間を要することも珍しくありません。