黒死病とは何か?中世欧州を壊滅させた致死率と症状・感染経路の真実
黒死病の象徴的なビジュアルとして知られるのが、鳥のクチバシのようなマスクと黒い長外套を身にまとったペスト医師(Plague Doctor)の姿です。一見すると奇怪なオカルト衣装のように映りますが、当時の医学的見地に基づいた高度な「防護服」としての意図が込められていました。
当時、病気は悪臭や汚染された空気(ミアズマ/瘴気)を吸い込むことで発症すると信じられていました。そのため、クチバシの先端部分には樟脳、バラの花弁、ラベンダー、ミントなどの香草や香料がぎっしりと詰め込まれ、いわば天然の防毒フィルターとして機能させようとしていたのです。また、全身を覆う革製の外套には獣脂やワックスが塗り固められており、患者の体液付着やノミの侵入を物理的に遮断する効果を生み出していました。科学的な細菌学こそ未発達だったものの、飛沫や接触を防ぐという点において、現在の医療用ガウンやN95マスクの先駆けとも言える防御システムでした。