「月が綺麗ですね」は本当に夏目漱石の言葉なのか?2026年に迫る「日本一有名な誤訳」の真実と、タイパ時代の愛の形
漱石の「月が綺麗ですね」と並んでよく語られるのが、明治の文豪・二葉亭四迷の翻訳だ。彼はロシアの作家ツルゲーネフの小説『あひびき』で、女性が愛を告白する場面の「I love you(ロシア語ではまた異なるが)」に相当するセリフを「死んでもいいわ」と訳した。
「月が綺麗ですね」が男性から女性への、あるいは関係性がまだ曖昧な段階での遠回しなアプローチだとすれば、「死んでもいいわ」は身を焦がすような情念の告白だ。明治という、西洋の「個人」や「愛」という概念が急激に流入してきた時代に、先人たちがどれほど苦心して日本語の情緒に落とし込もうとしたかが伺える。