検査で異常なしの動悸・胸痛…心臓神経症の原因と治し方を徹底解明
病院の精密検査で「心臓に問題はない」と太鼓判を押されたにもかかわらず、当の本人は明らかな胸の苦しみを感じている――この激しいギャップこそが、心臓神経症の最大の苦しみです。「気のせい」「精神的な甘え」などと片付けられがちですが、患者が感じている痛みや息苦しさは決して幻覚ではありません。自律神経のバランス崩壊によって生じる本物の生理反応なのです。
心臓の拍動や血管の収縮・拡張は、意志とは無関係に働く自律神経(交感神経と副交感神経)によってミリ秒単位で厳密にコントロールされています。強い精神的ストレスや過労、睡眠不足、環境の急変などに晒されると、脳の扁桃体が過剰な危機シグナルを発信。交感神経が一気に優位となり、アドレナリンが血中に大量放出されます。その結果、冠動脈の微小な攣縮(縮こまり)、心筋の過収縮、肋間神経の緊張が引き起こされ、自律神経失調症による胸の痛みや激しい動悸が物理的に発生します。
さらに見逃せないのが、「内受容感覚の過敏化(Interoceptive Hypersensitivity)」と呼ばれる脳の情報処理エラーです。健康な人であれば気にも留めない日常的なわずかな脈の揺らぎや、誰にでも起こる良性の単発的な期外収縮に対して、脳のアラーム装置が「命の危機」として過大反応してしまいます。「また発作が起きるのではないか」という予期不安が交感神経をさらに刺激し、症状を再発・増幅させるという強固な悪循環が形成されてしまうのです。