土と対話し削り出す一期一会の美。陶芸家・井上茂が手掛ける「原土の器」の真価と魅力
日本六古窯の一つとして千年以上の歴史を誇る陶工の街、愛知県常滑。この地に工房を構える井上茂氏の作陶は、土を仕入れることから始まらない。近隣の畑や山から土を掘り起こす作業からスタートする。
一般的な陶芸では、不純物を取り除き、可塑性を高めた「精製土」を用いるのが常識だ。精製土はひび割れや歪みが起きにくく、計算通りの形を作りやすい。しかし、井上氏が選ぶのは不純物が混ざった「原土」である。土の中に混ざり込んだ砂や小さな石、有機物は、焼成時に思いがけない表情を生み出す。
「土がなりたがっている形にする」。井上氏は語る。土の粘り気や水分の含有量を手先で感じ取り、その土が持つ個性を殺さずに形へと昇華させていく。均一化された工業製品とは真逆を行く、土の素顔を映し出す作業だ。