なぜ串に刺さない?今治焼き鳥の真実と地元民絶賛の名店ランキング
今治の焼き鳥店に足を踏み入れると、まず耳に飛び込んでくるのが「カチャカチャ、ジュウッ」というリズミカルな金属音です。カウンターの向こう側では、職人が傾斜のついた大きな鉄板の上で鶏皮を素早く炒め、手にした特注のコテで上からギューッと力強くプレスしています。炭火の煙を浴びながら1本ずつ丁寧に串を返す光景を想像していると、その豪快でスピード感あふれるライブ感に圧倒されるはずです。
今治焼き鳥における最大の謎である「串に刺さない理由」の背景には、この街が歩んできた産業史と、そこに暮らす人々の気質が深く関係しています。今治は古くから海運業や造船業、タオル製造業が盛んな港町。仕事を終えた造船工や商人、職人たちは、一刻も早く酒を飲み、腹を満たしたいという「極めてせっかちな性質」を持っていました。
通常の炭火焼き鳥では、じっくり遠赤外線で火を通すため、注文から提供までに15分から20分前後の時間を要します。しかし、日々の肉体労働や商談を終えて喉を鳴らす今治の男たちにとって、その待ち時間はあまりにも長すぎました。そこで昭和初期から戦後にかけて考案されたのが、熱伝導率の高い分厚い鉄板で肉を挟み焼きにする「鉄板焼きスタイル」でした。コテで上から圧力をかけることで、わずか3分から5分程度という驚異的なスピードで焼き上がります。串打ちの手間を省き、鉄板で一気に焼き上げる合理的なシステムは、まさに産業都市・今治が生んだ機能美の結晶といえます。