熊の襲撃現場で何が起きたのか?遺体の謎と専門家が語る生存戦略
現代の遭遇劇を読み解く上で、過去の凄惨な記録は今なお痛烈な教訓を突きつけている。かつて大正時代に起きた三毛別羆事件を緻密に取材・記録した元林務官の木村盛武は、クマが一度手に入れた獲物や所有物に対して示す異様な執着心を明文化した。その調査記録を基に作家の吉村昭が執筆した名著『羆嵐』は、一度人間を襲った個体が持つ残虐性と徹底した執着の恐怖を克明に描いている。
『羆嵐』に記された惨劇の構図は、令和の現代でも何一つ変わっていない。熊は一度「獲物」と定めたものを奪われた際、激しい怒りとともに奪還を試みる。捜査当局が現場周辺で遺体を収容する際、最も警戒するのがこの「執着心による再襲撃」だ。100年前の木村盛武の指摘は、最新の生態学データと照らし合わせても何ら色褪せることなく、現代の現場で活動するハンターや捜査員にとっての鉄則であり続けている。