マイケル「ビートイット」の意味は?逃げろと訳す理由と反暴力の真相
英語の動詞「beat」には「打つ」「叩く」「打ち負かす」といった基本義が存在します。しかし、代名詞の「it」が後置されて「beat it」という成句になると、日常会話では「立ち去る」「ずらかる」「失せろ」という全く異なる意味へと変化します。
この表現の語源には主に2つの有力な説が伝わっています。1つ目は、16世紀から17世紀の軍事慣行に由来する「beat a retreat(太鼓を叩いて全軍に退却を命じる)」という号令です。太鼓の連打が部隊を引き揚げさせる合図であったことから、「beat」という動作そのものが「後退・撤退」のメタファーとして浸透していきました。
2つ目は、19世紀末のアメリカで浮浪者や旅烏の間で使われ始めた「beat the track / beat the path(足の裏で地面を叩くようにして早足で去る)」という俗語です。荒野や線路沿いを徒歩で移動する情景から派生し、20世紀初頭には「beat it」と短縮され、「ここから消え失せる」という荒っぽいスラングとしてストリートに定着しました。
マイケル・ジャクソンの名曲『Beat It』における用法はまさに後者です。相手に対して「Beat it!」と言い放つ場合、そのニュアンスは「お願いだから避難して」という穏やかな懇願ではなく、「四の五の言わずにさっさと失せろ」「命が惜しければズラかれ」という極めて切迫した命令口調になります。