人間万事塞翁が馬の読み方は誤り?座右の銘の真相と使い方解説
日本能率協会などが定期的に実施する新入社員やビジネスリーダーを対象とした意識調査において、「座右の銘」ランキングの上位には常に「人間万事塞翁が馬」が名を連ねています。「臥薪嘗胆」や「初志貫徹」といった力強い努力志向の成語が並ぶなかで、なぜこの達観した言葉がこれほどまでに支持を集めるのでしょうか。
大手上場企業の経営企画部門で長年キャリア相談を担当してきた専門家は、次のように分析しています。
「経済の先行きが極めて不透明で、個人の努力だけではコントロールできない市場変動や突発的リスクが常態化した環境下では、過度な全能感や完璧主義は精神の崩壊を招きかねません。成功に傲慢にならず、挫折に打ちのめされない中庸のメンタルモデルとして、塞翁が馬の思想は極めて実践的な防御壁として機能しています」
認知行動療法の観点からも、この故事は「認知的リフレーミング(物事の解釈の枠組みを意図的に再構築すること)」の完璧な手本と位置づけられます。人間は目の前で生じたネガティブな事象に対して「最悪だ」「人生が終わった」と破局的な解釈を下してしまいがちです。しかし、塞翁の態度は「現時点では損失に見えるが、これが将来どのような展開を生むかは誰にも分からない」という保留の姿勢をとっています。
この「判断保留の知恵」こそが、精神医学でいうレジリエンス(精神的回復力)の根底にあるものです。短絡的な成功・失敗にとらわれず、長い時間軸で人生を捉える視線が、プレッシャーに晒される現代人の心を強く引きつける要因となっています。