「あはははは」と笑う人の心理とは?不自然な笑いに潜む本音と見分け方
「あはは」という表現は、決してデジタル時代に突然生まれたスラングではありません。日本の言語史を遡ると、その用例は江戸時代後期の町人文化にまで行き着きます。
精選版 日本国語大辞典の記録によると、「あはは」は「口を大きくあけて高く笑う声」を指す感動詞として定義されています。滑稽本の代表作である式亭三馬の『浮世床』(1813〜23年刊行)の初編には、「べらぼうめ頭巾を冠って居るはい」「アハハハハ」という町人同士の軽妙な掛け合いが初出の実例として記されています。言語学の研究機関であるOnomato Projectや各種国語辞典の解説でも、古くから開放的で陽気な笑い声を写し取る擬声語として位置づけられてきました。
しかし、時代が下るにつれて「あはは」の持つニュアンスは多層化していきます。音楽シーンにおいては、DREAMS COME TRUEが1998年にリリースしたシングル(1997年の名盤『SING OR DIE』収録、吉田美和作詩・作曲、中村正人編曲)の『あはは』のように、失恋や心の痛みを強がりの笑顔で包み隠す女性の切ない心情を歌い上げる象徴として昇華されました。
さらに近年では、YouTubeなどで反響を呼んだ初音ミク・歌愛ユキのボーカロイド楽曲『あははははははは』に見られるように、「生活の営為」や「胸の澱」といった不穏な気配、都市生活の虚無感や狂気と結びつけられる事例が増加しています。江戸時代の素朴な大笑いから、感情の乖離を描くサブカルチャーのメタファーへ――「あはは」という音の連なりは、時代の不安を映し出す鏡へと変容を遂げています。