ベトナム語「シンチャオ」は使わない?通じる挨拶マナーと発音の真相

ベトナム語「シンチャオ」は使わない?通じる挨拶マナーと発音の真相について重要なポイントを解説いたします。専門家の見解をチェックしてください。

日本語では朝会えば「おはようございます」、昼なら「こんにちは」、夜なら「こんばんは」と時間を基準に挨拶を切り替えます。しかし、ベトナム語には時間帯で区切る概念が原則として存在しません。ベトナム語おはようございますやベトナム語こんばんはに相当する独立した常用表現はなく、朝であっても夜であっても、基本骨格はすべて「Chào + 相手を指す人称代名詞」で完結します。

ベトナム語挨拶使い分け理由の根底にあるのは、儒教文化に根ざした「家族主義的ヒエラルキー」です。ベトナム社会では、社会全体を一つの巨大な親族ネットワークとして捉える心理的傾向が強く働いています。目の前の相手が自分から見て「兄のような存在か」「妹のような存在か」「祖父母世代か」を瞬時に判断し、親族呼称を借りたベトナム語人称代名詞を割り当てて挨拶を交わすことが、敬意と親愛を示す絶対的なマナーとされています。

日常会話で頻出する主要な人称代名詞は次の通りです。

  • Anh(アイン):自分より年上の男性、または同世代の男性に対する親愛を込めた呼称(兄に相当)
  • Chị(チ):自分より年上の女性に対する呼称(姉に相当)
  • Em(エム):男女を問わず、自分より年下の相手に対する呼称(弟・妹に相当)
  • Ông(オン):祖父ほどの年代の男性に対する敬称
  • Bà(バー):祖母ほどの年代の女性に対する敬称
  • Bác(バック):自分の両親よりも年上に見える年配者に対する敬称(男女共通)
  • Chú(チュー):自分の父親より若い中年男性に対する敬称(叔父に相当)
  • Cô(コー):自分の母親より若い中年女性に対する敬称(叔母に相当)

相手が年上の男性であれば「Chào anh(チャオ・アイン)」、年下の女性や若者であれば「Chào em(チャオ・エム)」と呼びかけます。ベトナムの社会心理学において、人称を省略した一般的な「Xin chào」を投げかける行為は、「私はあなたと家族的な温かい関係を築く意思がありません」という無意識のバウンダリー(境界線)を引くことと同義に捉えられかねません。相手をしっかりと観察し、適切な人称で呼ぶことこそが、心の距離を縮める第一歩となります。

高橋 健太

高橋 健太

ライフスタイル編集者

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。