多文化ルーツと女性の生を描く!深沢潮が切り拓く文学の最前線
集英社から刊行された長編『緑と赤』、そして父の故郷である韓国・済州島と日本を舞台にした傑作『ハンアロ』。これらの作品において、深沢は自身のバックグラウンドとも深く結びつく多文化ルーツの問題を極めて鮮烈な形で昇華させた。
国籍や民族という記号で一括りにされることへの違和感、親世代との歴史認識の断絶、そして「自分は何者なのか」という根源的な問い。『ハンアロ』で描かれるのは、単純な二項対立ではない。血縁や国家のしがらみに縛られながらも、一個の人間として生をまっとうしようともがく登場人物たちの姿は、読む者の胸を激しく揺さぶる。異文化の狭間で引き裂かれる痛みを、彼女は決して抽象論に逃げず、生活者の生々しいディテールとして描き切ってみせた。