熱海に東横インがない決定的な理由と2026年最新の出店・格安宿事情
なぜ東横インは日本有数の知名度を誇る熱海への進出を見送っているのでしょうか。観光都市としての特殊性、地形的制約、そしてビジネスホテルの収益モデルを照らし合わせると、3つの構造的な要因が浮かび上がります。
1. 独特なすり鉢状地形と「駅前平坦地」の極端な希少性
詳細を見る熱海は海に向かって急傾斜が続く「すり鉢状」の地形をしています。JR熱海駅周辺の平坦な土地は極めて限られており、古くからの老舗旅館、商業ビル、大規模リゾートマンションが密集しています。
東横インの出店モデルは、一定規模(100〜200室以上)の客室を効率的に配置できる整形地を基本としています。熱海駅前でこのようなまとまった用地を確保することは極めて難しく、仮に用地が出たとしても、リゾートホテル開発事業者や大手不動産デベロッパーとの激しい取得競争により用地取得費が跳ね上がる構造にあります。
2. 平日ビジネス需要の薄さと「観光地特有の稼働ギャップ」
東横インの収益基盤は、平日に出張で訪れるビジネスパーソンの安定的な宿泊需要です。工業団地や大規模なオフィス街、行政機関が集積する三島・沼津・静岡エリアとは異なり、熱海市内の産業構造は観光業・飲食業・医療福祉が中心であり、平日の純粋なビジネス出張需要は決して多くありません。
週末や行楽シーズンには客室単価を高価格帯に引き上げられる一方、平日には客室稼働率を維持しにくいというリゾート特有の繁閑差は、年間を通じて均一な低価格オペレーションを強みとする同社のビジネスモデルと相性が合わない側面があります。
3. 景観条例・温泉インフラに伴う開発コストの増大
熱海市では良好な景観と住環境を守るため、「熱海市まちづくり景観条例」等によって建物の高さ制限、意匠、色彩に関する厳格な基準が定められています。画一化された設計によって建築コストを抑えるチェーンホテルにとって、地域ごとの特別仕様設計はコスト増の要因となります。
さらに、熱海でホテルを運営する上で温泉の有無は宿泊客の満足度を左右する重要な要素ですが、温泉の引湯権取得や維持管理には継続的なコストが発生します。「シンプルな宿泊特化型ホテル」として全国展開する規格とは、インフラ面でも乖離が生じやすいのが実情です。