幻のお召し列車|非公開ダイヤの真相とE655系特別装備の秘密
お召し列車の歴史は、日本の鉄道近代化の歴史そのものです。明治5年(1872年)の鉄道開業時に明治天皇がご乗車された最初の御料車(ごりょうしゃ)から始まり、時代ごとに当時の最高技術を結集した名車たちが生み出されてきました。
歴代のお召し列車専用車両のなかでも、特に鉄道史に燦然と輝く伝説の車両群を振り返ります。
1. 昭和を駆け抜けた気高き客車「1号編成」
戦前から戦後、そして昭和の黄金期を支えたのが、宮内省(現・宮内庁)および国鉄が製作した皇室専用客車群、通称「1号編成(お召し客車)」です。中央に位置する「御料車1号」には玉座、御休憩室、御化粧室が完備され、外装は「深紅(ぶどう色)」の重厚な漆調塗装で仕上げられていました。この1号編成を牽引するために専用指定された機関車「EF58形61号機(通称:ロクイチ)」は、磨き上げられたステンレスの飾り帯と、一切の油汚れを許さない入念な手入れで鉄道ファンの羨望の的となりました。
2. 電車化の波と日光・伊豆路を結んだ名車「クロ157」
昭和35年(1960年)、鉄道の動力近代化(電化)に伴い登場したのが貴賓電車「クロ157形(クロ157-1)」です。157系特急形電車の中間車として製造され、貴賓室や随伴員室を備えていました。その後、183系や185系といった特急形電車の先頭や中間に連結できるよう改造され、那須御用邸や伊豆・須崎御用邸へのご静養時に長年にわたって重用されました。現在は東京総合車両センターに大切に保管されています。
3. そして令和の現在へ受け継がれる技術
現在のE655系に至るまで、歴代のお召し車両に共通しているのは「日本最高峰の匠の技と最新テクノロジーの融合」です。内装の組子細工や漆塗り、防弾ガラスや二重三重の冗長化電源システムなど、国家の品格と絶対の安全性を両立させる思想は、いつの時代も日本のモノづくりの頂点を示しています。