北杜夫の波乱万丈な生涯と死因の真相|躁鬱病と名作誕生の全軌跡
破天荒な文学人生を歩んだ北杜夫の背後には、常に家族の強固な絆と無償の愛が存在していました。
父・斎藤茂吉に対しては、畏怖と強いコンプレックスを抱きつつも、文学者として深い敬愛を捧げました。父の死後、膨大な資料を渉猟して書き上げた評伝『茂吉四部作』は、文芸批評としても傑出した完成度を誇り、父弟の魂の対話として結実しています。
「モタさん」の愛称で国民的人気を博した兄・斎藤茂太は、同じ精神科医・随筆家として、躁状態の弟が引き起こす金銭トラブルやトラブルの収拾に奔走しました。茂太は弟の類まれな才能を誰よりも信じ、終生にわたり最大の理解者であり続けました。
そして、愛娘であるエッセイストの斎藤由香の存在です。由香は著書『猛父襲来』や『窓際OL』シリーズなどで、家庭内での破天荒な父の素顔をユーモラスに暴露しながらも、純粋で傷つきやすい父への尽きない敬意を描いています。家族全員が北杜夫という不世出の表現者を温かく受け止め、その創作活動を支え抜きました。