脚光の裏で紡いだ表現者魂。佐藤江梨子の現在地と知られざる素顔
佐藤江梨子の評価を決定的に変えたのが、2007年の映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(吉田大八監督)である。演じたのは、女優を夢見ながらも傲慢で自己中心的な性格ゆえに周囲を翻弄する主人公・和合澄香。自意識過剰で醜悪な人間のエゴを一切の保身なく演じきったその芝居は、国内外の批評家から絶賛を浴びた。
映画業界において彼女が見せたこの「怪演」は、カンヌ国際映画祭の批評家週間への出品をはじめ、第17回日本映画批評家大賞で主演女優賞を受賞するという形で結実する。美貌を誇るタレントというパブリックイメージを粉々に打ち砕き、人間の滑稽さと悲哀を丸ごと背負った彼女の演技は、現在も日本映画史に残る怪演のひとつとして語り継がれている。