期限切れの薬を飲む危険性とは?薬剤師が教える正しい見分け方
薬が体内でどのように吸収され、分布し、代謝されて排泄されるかを探る学問が「薬物動態学」だ。この観点から見ると、期限を過ぎた薬の体内動態は極めて予測不能である。主成分が熱や湿度、光によって徐々に分解されると、本来期待される血中濃度まで達せず、治療効果が得られないばかりか、耐性菌を生み出す原因にもなる。
さらに深刻なのは、分解過程で生じる副生成物の存在だ。アスピリンなどの一般的な鎮痛成分でさえ、加水分解が進むとサリチル酸と酢酸に分離し、激しい胃粘膜障害を引き起こすリスクが高まる。テトラサイクリン系抗生物質のように、劣化生成物がファンコニ症候群と呼ばれる重篤な腎機能障害を誘発する事例も臨床現場で知られている。厚生労働省が定める品質規格を外れた薬を飲む行為は、未知の化学物質を自ら体内へ流し込むのと同義なのだ。